激動の歌舞伎町浄化作戦の1コマを垣間見た出来事。

スポンサーリンク

 

実はホストを始めたと同時ぐらいに同い年の彼女ができた。

 

彼女と出会ったのは六本木の街コン。この街コンは2人で参加しないと行けない街コンで、師匠が探してきてくれたものだった。

 

彼女は同い年で、ホストをやっている僕を支えてくれたし、付き合ってもくれた。

 

どんな仕事をしていても、人間として僕の事を好きになってくれた人だったと思う。

 

「明日からホスト行かないんだ。」と伝えると、すごく喜んでくれたのを今でも覚えている。

 

ホストは顔だけじゃない?

 

ホストを辞めたのは11月手前ぐらいだっただろうか。生まれてきて初めて労働者として見事に職場を飛んだ。(笑)

 

給料日に最後の給料をもらって、大声で「ありがとうございました!」と全員に向かって頭を下げた。

 

何だコイツ?と皆から笑われたが、もう次の出勤日から行かなかった。

 

前日に雫も飛んだらしい。給料日の翌日は休みだったが、店の人から「大変なことになったから、折り返し連絡くれ!」と留守電が入っていたけどその事だったのかな。

 

でももう辞めると決心した僕には、関係ないことだ。

 

そしてその2週間ぐらい前に来夢が飛んでいた。初め来夢がどこに行ったのかは同じ寮部屋の雫も分からないと言い張っていた。

 

それから数日経ったある日、アタリの客に当たってしまったらしく、酒に強い雫が終業後に店の裏のトイレで吐いていた。

 

雫を介抱している時に、偶然雫の鞄のポケットからはみ出している紙が目に入った。その紙は郵便局の伝票の控えで、静岡の住所と来夢の本名が書いてあったので察しが付いた。

 

来夢が辞めて1週間ぐらい経った日、僕は店から出たところで相変わらずキャッチをしていた。もうスーツでは肌寒い夜が関東にも押し寄せていた。

 

店の前を通る女の子が可愛かったので声を掛けてたわいもない長話をしていると、気付かないうちに後ろに代表がひっそり立っていて本当にびっくりした。

 

僕は急にきまり悪くなって、その女の子に「じゃあまた…連絡するね」と言った。

 

代表はそっと近づいてきて僕に目を合わせずに「自分の為にならないと分かった時点で次に行くべきだろうなぁ…」と決して怒っているわけでもなく静かに言った。

 

代表、彼は洞察力に長けていた。こういう人の事を頭が良いって言うんだろうと人生で初めて思った。

 

年は僕の2つ上、でも月収は僕の10倍。その差は一体なんだろう?

 

その時そんな事を考える余裕が僕の頭には無かった。今思い返せば、彼の行動全てを、そのものを注意深く見れば分かったのかもしれない。

 

彼の話し方、立ち振る舞い、身に付けているもの、化粧の仕方、視野(見ているところ)をスポンジのように吸収すれば、僕でも彼と同じ人間になれたのかもしれない。

 

彼は僕の目を見ずに遠くの方を見て「なんで来夢が売れなかったか分かるか?」と言った。

 

何も言わない僕に、彼は少しだけ間を置いて言った。

 

「あいつは中身がクソだったからだ。あの顔なら月30、40は行ける。でもそれ以上に中身がクソ過ぎた。だからダメだった」と。

 

東京五輪決定による歌舞伎町浄化作戦

 

その当時は毎日夜働く事に精一杯で何も考えてなかったけど、僕がちょうど辞める頃あたりに2020年に東京五輪開催が決定したらしい。

 

そのあたりから急に歌舞伎町の人通りもガクッと減ったと思う。9月以降だったかな、急にキャッチや客引きを取り締まる旨を書いた縦長の白地に黒文字の立て看板があちらこちらの電柱に増えた気がする。

 

2020年五輪、東京開催が決定 56年ぶり アジア初の2度目

引用:日本経済新聞 2013/9/8付

 

新宿歌舞伎町が消滅?警察の浄化作戦スタート=東京五輪開催決定で―華字メディア

引用:歌舞伎町浄化作戦 ー Record China

 

雫は「もう歌舞伎町はダメだから地元の埼玉でやろうと思っている」と言っていた。

 

僕もそろそろ貯金の底が見え始めてきたので足を洗うつもりだったし、これはちょうど良い機会だと思った。

 

ある日、店の内勤兼プレーヤーの人が僕と同じようにキャッチしていた。その人は僕より後に入ってきたけど、なんかお店の人と昔一緒に働いていたとかでコネのある人だった。名前を楓と言った。

 

皆生きてきた環境はそれぞれ違うと思うけど、この人はすごく肉食系でガッツがあった。若かりし頃、当時入店1ヶ月間で100万稼いだ猛者らしい。

 

また10年ぐらい経ってホストを始めたきっかけは、身内がガンに掛かったらしく、そしてその治療費が要るそうだ。

 

僕の母もそうだったので、決して他人事ではない。この人は本当に優しい人なんだなと感じた。

 

楓は店から出てきて僕の横に立った。そして、向こうから来る栗色の髪のスラリとした女性に近づいて行った。

 

よく見ると、それはさっき店の前を通った女性で、僕がビラを渡そうとした女性だ。

 

結果ビラを取ってはもらえなかったが、愛嬌のある笑顔で軽く会釈をしてくれた女性だった。

 

楓が女性に話しかけていく、これはビラ配りじゃない。セールストークで足も女性にしっかり付いて行っている。これは完全なキャッチだ。

 

女性と楓は見えなくなるぐらいまで遠くまで歩いていった。そして、ほとぼりが覚めた頃、楓は戻って来た。

 

楓はダメだったらしく、店への階段を降りて行った。その後だった。

 

ふとサラリーマン風のYシャツ姿の男性がどこからともなく現れた。推定40代ぐらい。

 

そして何を思ったのか楓が降りて行った階段を下っていく。

 

??

 

(ここは女性が来るところだぞ、オッサン行くところ間違ってない?)

 

次の瞬間、別の内勤に呼ばれた。「達哉、ヘルプでC卓に付いてくれ!」

 

階段を降りて店に入っていこうとすると店前に何やら人だかりができていた。中心に楓が居る、その周りを取り囲むようにして40代ぐらいの数十人のサラリーマン風の男性が居た。

 

そこで悟った。警察だ!

 

そう、楓が付きまとった長髪の女性はなんと婦人警官(オトリ)だったのだ。その後そのサラリーマン風の男性達と共に楓の姿は無くなっていた。

 

僕はビラを配る時立ち止まって配っていたので助かったが、これを楓のように歩きながらやってしまうと見事なキャッチセールスになる。

 

楓は10日前後の拘留処分となった。

 

歌舞伎町が変わり始めていくのをとても身近に感じた出来事だった。

 

スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です