君も一度はホストをやってみると、割と人生観が変わるかもしれない。

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寝汗で目が醒める。嫌な夢にうなされていた。起きた時、僕はいつもさっきまで見ていた夢を覚えている。

 

今日も15時、もうとっくにお昼は回っている。

 

入って1ヶ月目ぐらいでキャッチの成果もあって僕にもぼちぼちお客が付き始めていた。

 

お相手は29歳の女性で僕より4歳程お姉さんで、夜中に新宿東口付近でキャッチした人だった。

 

同伴時は新宿伊勢丹でぶらぶらとウィンドウショッピングしたりした。

 

アフターもカラオケに行ったり、年が近いので何かと楽しめたと思う。

 

ただし、何回かお店に来てもらう中で段々と二人の中で問題が生まれ始めた。

 

お姫様の束縛にどこまで耐えられるか?

 

どうしても多額のお金を出してもらっている手前、相手の欲求に沿って色々と自分が我慢しないといけない時が出てくる。

 

「もっとギュッとできないの?それが達哉君の真剣なギュッとなの?」とか。

 

「お金だけの関係じゃないって言ってたじゃない?通わなくても会える関係だって言ってくれたじゃない?」とか。

 

正直言って、段々面倒臭くなってくる。

 

その面倒臭さにどれだけ我慢できるか、耐えられるか、バカになれるか?一途になれるか?一所懸命になれるか?ホストはそれらに掛かってくるのかもしれない。

 

そういう僕は長くは耐えられなかった。

 

残念ながら、お店でボトルを入れてもらう前に関係は終わった。

 

他にも20歳の女の子をキャッチした事もあった。

 

店の近くにホテル街があるが、その中の一軒をお母さんが経営してるらしい。

 

(マジで…、こんなに近かったら使えないじゃん笑)

 

この子自身もこのホテルの清掃員として働いているそうだが、いつもベッドメイキングは辛いと言っていた。

 

お父さんは地元で中華料理屋さんを経営してるらしい。

 

お店に一回来て欲しいと言うと、ちゃんと1万円お金を貯めてから来てくれた真面目な子だった。

 

お店の人には「達哉が連れてきた子、すごい可愛いじゃん。でも普通の家庭の女の子じゃないのかもね」と言われた。

 

お母さんがホテル経営してて、お父さんは中華料理屋を経営してる。全然気にした事はなかったけど、確かに普通じゃないのかも知れない。

 

でも、雰囲気はすごく普通だし、優しくて妹みたいでとても可愛らしかった。一回だけ自宅に呼んで遊んだ事もあった。

 

少しだけヒステリックな子だったから、感情が高まって急に泣き出してしまう事もあった。でもまあ人間生きてたらそういう事もあるよね!と仲良くしていた。

 

ある日、池袋の松屋でこの子と牛丼を食べてる時に、突然この子が「自分は何の為に生きてるのか分からない」と言い出した事があった。(現在閉店)

 

 

そして、ある意味今より大変なベッドメイキングをする仕事の体験に行ってみたいと言い出したり、徐々にこの子の不思議な所が見え始めた。

 

「私、何の為に生きてるか分かんないの。」

 

牛丼を食べ終えた後、いきなり彼女がこう口にした。

 

思わず、え?と思ったし、「そりゃあ俺も分かんないよ!」と言いたかったけど、ここはホストとして演じる必要もあるんだろう。

 

うーん。。ここで考えた挙句、僕が口にした言葉はこれだった。

 

「じゃあ、俺のために生きろよ!!」

 

もちろん牛鍋掻き混ぜてる店員も居るし、モシャモシャ牛丼を喰ってる会社員も隣に居る。わりかしシーンッ!とした店内の訳だからそんな大きな声は出せないけど、極力感情に訴える感じで言ってみた。

 

すると、あまり大きな反応がなく、コクっと頷いた(首を傾げた?)様な感じだった。

 

結局、これを境にこの子と会う機会は減ってゆく。

 

先輩のホストからはお前はほんとダメだな~とか色々言われたけど、まだ未来のある20歳の素朴な女性を今より大変なベッドメイキングの仕事をさせるなんて事は、僕の人格が変わらない限りとてもじゃないけど出来なかった。

 

この二人のお客さんが離れていくに連れて、僕のホスト生活も終盤に差し掛かっていく。

 

気付けば季節は10月を過ぎ、秋が近づいている。毎日のように店の前に居るビラ配りホスト達にも涼しくて優しい季節が訪れていた。

 

寮に泊めてもらった思い出

 

ある日、来夢と雫と仕事上がりに遊んでいて、翌日が店休日だったから、そのまま二人が入っている寮にお邪魔する機会があった。

 

お店の寮は、歌舞伎町2丁目にあるライオンズマンションだった。ただ何か寂しい雰囲気が漂うマンション。

 

 

中に入ると、部屋がすごく広い。築年数はそれなりに経ってそうだが、建物の造りはしっかりしてるし、大の男にとっても全く圧迫感のない造りで住み心地は良さそうだ。

 

「お邪魔しまーす!」と言いながら玄関から通路を右に進んでリビングルームまで抜けてゆく。

 

するとどこからともなく聞こえていたイビキの音がどんどん大きくなってくる。

 

リビングルームに入った所には、死体が!。。じゃなくて人が寝ていた。それも尋常じゃないイビキをかきながら。

 

ゴーッ!ゴーッ!

 

なぜかマスクをしながらスーツを着たまま腕を組んでリビングの地べたに横たわって爆睡している。それは先輩ホストのイトだった。

 

イトはどちらかと言えば小顔な方で、下顎が発達していなさそうな顔立ち。強烈なイビキの原因はそれなのだろうか。

 

 

イトを起こさずにそっとしておいて(踏まずに跨いで)、奥の部屋に向かった。夜の衣装や指輪やネクタイのようなアクセサリ、コンタクトレンズの装着液など以外、部屋に余分な物はほとんど無い。

 

万年床かと思える布団が3つ4つ縦向きに敷いてある。いつ頃からシーツは替えていないのだろうか。

 

こういう居場所って、苦手な人は本当に苦手だろうが、夜明けまで起きてクタクタに疲れた僕には全く抵抗は無い。

 

「たっちゃん、泊まっていっていいよ!」

 

「えっ?良いの?ありがとう!」

 

寮費を払ってない僕にも同僚ホスト達は皆優しかった。集団で眠ると言えば、高校時代の勉強合宿を思い出す。

 

テレビも何も無くても、皆と一緒に布団を敷いて寝るのが楽しいのは何故なんだろう。

 

僕は一番奥のベランダ側の布団を借りて横たわると、皆と少しの雑談をしてすぐ夢の中に落ちていった。

 

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