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アンニョン!セキタンです!
今月の10月15日、関西にとあるiPhone修理店が出店しました。
その名はiCracked(アイクラックト)、アメリカのシリコンバレー初のiPhone修理業者です。
iCrackedは昨年末のIT media mobileでも取り上げられていましたが、日本国内では株式会社光通信とタッグを組んでおり、今年に入ってから北海道は札幌、東京は渋谷と池袋、関西は大阪心斎橋へ新規出店を進めています。
電波法違反になる恐れも――日本に上陸したスマホ修理業者「iCracked」の問題点
スマートフォン修理業者の「iCracked」が、12月4日から東京の渋谷に第1号店をオープン。iPhoneを安価に修理できるのが特徴だが、このサービス、法的にクリアになっていない問題点がある。そこに大きく関わってくるのが「登録修理業者制度」だ。
引用元: iCracked – IT media Mobile
論点となる登録修理業者とは?
上記の記事に目を通すと、日本上陸間近のiCrackedとそのパートナーの光通信が何やら別の理由で叩かれていました。
その理由がいまいち分かりにくいのですが、記事をしっかり読み込んで行くと、どうやらスマホの修理事業には総務省の登録修理業者制度というものが大きく関わっているようですね。
総務省 登録修理業者制度
1.制度化の背景
携帯電話端末(特別特定無線設備)の修理をする場合、その製造業者に修理を依頼することが一般的ですが、スマートフォンの急速な普及などに伴い、製造業者以外の第三者である修理業者が修理や交換を行う事例がみられるようになりました。その一方で、その第三者が携帯電話端末を修理することによって、修理後の携帯電話端末(特別特定無線設備)の性能が電波法で規定している技術基準に適合するかどうか不明確になる等の点が懸念されていました。このような背景を受け、修理の箇所及び修理の方法が適正で修理後の無線設備が技術基準に適合していることを第三者である修理業者自らが確認できるなど電波法で定める登録の基準に適合する場合には、総務大臣の登録を受けることを可能とする登録修理業者制度を導入しました。引用: 登録修理業者制度 - 総務省 電波利用ホームページ
IT mediaの記事によると、場合によってはスマホ修理が電波法違反になるという見解が示されていますが、これは一体どういうことなのでしょうか?
端末を開けただけで法律違反?
ざっくり簡単に言えば、日本では特別特定無線設備(スマホやタブレットなどの無線機能の付いた携帯端末)が発する電波に関して、細かく法律で定められています。
これらの修理をする際に、登録修理業者以外で端末の中身を開けてしまうと、その時点で技適マーク除去義務違反になります。
適合表示無線設備と同等の機能であっても技術基準適合証明の技適マークの無い機器、または技適マークがあるが改造された機器の使用は、総務大臣の免許の無いまま無線局を開設したこととなり、第110条第1号により1年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑に処される。
第38条の7第3項に「特定無線設備の変更の工事をした者は、総務省令で定める方法により、その表示を除去しなければならない。」とある。これに基づき証明規則第8条の2には次のように規定されている。
- 表示の外観が残らないように完全に取り除く。
- 容易にはく離しない塗料により表示を識別することができないように被覆する。
- 電磁的方法による場合は当該表示を映像面に表示することができないようにする。
すなわち、技術基準適合証明の技適マークのついた機器を改造したら、表示を除去しなければならない。これを怠ると第112条第1号により50万円以下の罰金刑に処される。罰則があるように特定無線設備の改造は奨励されるものではない。
技術基準適合証明が無いのに技適マークまたは紛らわしい表示を無線設備に表示した者は、第38条の7第2項に基づく第112条第1号により50万円以下の罰金刑に処される。
引用:技適マーク - wikipedia
これは本来、技適を通過した端末の中身を開けて修理する前に、元々付与されている技適マークがあるのであれば、除去しないといけないと法律で定められているからです。
日本国内でユーザーに対面販売されている端末は基本、この技適マークは付与されています。日本国内で使えなきゃ意味ないからですね。
逆に言うと技適マークが無いもので無線利用すると、電波法違反です。
Amazon等のネット通販で販売されている海外モデルの端末には技適マークが付いていない端末はたくさんあります。並行輸入品と言われるものになります。
総務省の技適マークが付与されることなく、海外から直輸入されたものです。これらの無線機能の使用は十分に注意してください。国内での無線利用は日本の電波法に抵触します。
総務省の登録を受けた登録修理業者は、技適の除去は法律上行えますが、現代端末の技適マークの除去は登録修理業者でさえも行えません。
なぜなら今の技適マークは端末情報の電子表示に切り替わってきている為、物理的に消せないという理由からです。
電子表示を消すことは、登録修理業者でも今はまだ出来ないですね。。
ここで数年前のガラケーとか引き出しから出してきて見たら、やっぱり技適マークは全てステッカー(シール)タイプです。
ポケットWi-Fiとかもこんな感じで技適マークが物理的にシールで付与されていますね。
![[Tags] Image-2016-10-22-at-11.56-1 米国シリコンバレー初のiPhone修理ブランドiCrackedが光通信と組んで関西上陸!スマホ修理業界の黒船が見据えた先とは?](http://i1.wp.com/happylifemobile.net/wp-content/uploads/2016/10/Image-2016-10-22-at-11.56-1.jpg?resize=728%2C546)
郵便番号みたいな技適マーク達
登録修理業者による登録修理の流れとは?
例えば、ある登録修理業者で、このポケットWi-Fiが登録修理として修理ができる端末だとしましょう。
端末の修理前にまず、この技適マークのステッカーを剥いでから、修理をスタートします。
そして修理が完了したら、次はその登録修理業者が『今回の修理内容は端末から出力する電波の質に影響を与える修理内容ではなかった』ということを証明する為に、技適シールを再付与する(再付与できる)というのが登録修理業者のやり方ですね。
この流れは、あくまで出力される電波の質に影響を与えない登録修理として認められる箇所の修理のみが対象となります。
また、一度でも非登録修理業者(無登録修理業者)での修理歴のある端末も登録修理として世の中には送り出せません。
厳密に言うと、既に電波の質に影響があるかもしれない為です。
これは日本国が、日本国内で使用する上で問題ない電波を出力する端末(スマホ)ということを証明するものです。
つまり、国の登録修理業者でないと技適マークの付与が出来ない(してはいけない)ので、修理した後の端末の電波出力が基準値であるという保証がまずできません。
IT meidaの記事では、iCrackedが登録修理業者ではないのであれば、この部分で電波法違反になる可能性があると取り上げていました。
そこで、国の登録を受けた特定の修理業者を国の登録制にしてしまおうという法律が登録修理業者制度です。
国の法律、電波法と電気通信事業法に則った修理内容を行う修理業者で修理した方が安全ですよ、現状ではまだ実際に検挙されたりしてませんが法律違反とはなりませんよ、ということです。
国内第6番目の登録修理業者に
IT mediaの記事が出ていた昨年末当初は、iCrackedは実は登録修理業者ではありませんでしたが、今年の9月16日付けで、総務省の登録修理業者一覧にその名を連ねました。
R00006、T00006の第6番目に総務省が認める日本国の登録修理業者です。
iCrackedの創業者は「iPhoneの修理なんて85%が画面の修理だから、日本国総務省の登録修理業者制度も電波法も関係ない」みたいなことを言ってましたが、やっぱり日本人にとっては日本でそのような法律がある以上、少しは神経質になります。
なぜなら、登録修理業者制度に則った登録修理業者ではないなら、
⇒修理前端末の技適マークの除去も行えない(ここで既に法律違反)
⇒修理後端末の技適マークの付与も行えない(ここでも法律違反)
スマホ修理事業を行う事業者側としては、法律に照らし合せて見てみたら、自社がやっていること。結構ヤバくないですか…?
尚且つ、現行法で罪を問えるのは、違法改造に当たる修理作業を行った無登録修理業者達ではなく、違法改造されたその端末を使用するユーザーこそがその罪の対象(電波法違反)となる可能性があるという、消費者に濡れ衣を着せるような法律も存在しています。
まだスマホの修理業界自体が新しい分野ということもあり、ビジネスモデル自体に日本の法律が追いついて行っていないところはあるのでしょう。
iCrackedの見据える先とは?
光通信と組むiCrackedは、日本国内でも本格的にスマホ修理事業を展開していく予定のようですが、どうやら本当の目的はそれだけじゃないかもしれません。
iCrackedが考える未来事業は、スマホの修理だけではありません。
スマホユーザーから見て、メーカーと携帯キャリアと行う必要が出てくる全てのやり取り(すなわち雑務)を、モバイルライフサポートをする存在になろうとしています。
スマートフォンの分解と修理で稼いできたiCrackedが消費者電子製品の全ライフサイクルサポート業へ大飛躍
同社が目指しているのは消費者電子製品の販売企業だが、これまでの単に売るだけの小売業と違って、消費者の手元におけるその製品の全生涯のお世話をする。それを目指す第一歩として、スマートフォンの下取り過程の自動化から始める。そのために必要なキャリアとの新たな契約からデータの転送まで、一部始終を消費者に代わってiCrackedがやるつもりだ。
iCrackedのファウンダAJ Forsytheはこう言う、“その日が来たらボタンを押せばiTech(iCrackedのエンジニア)が画面に出る。そして彼があなたに新しいスマホを送り、古いのを下取りし、損傷説明を開示する”。
引用: iCracked - techcrunch.com
もっと大きく言うと、スマホユーザーの生涯のモバイルライフパートナーのような存在になることのようです。
例えば、今日本でもあり得ることで言うと、スマホを水没させてしまった場合、これは買い替えになりそうですね。
iPhoneだったらアップルストアで本体交換してもらったり、それ以外の機種ならその他のメーカーに問い合わせたりする必要が出てきます。
続いて、スマホを紛失してしまった場合はどうでしょうか。
私ならまず、交番に遺失届を出します。
それでも見つからなければ、買い替えになりそうですね。つまり、SIMカードも再発行しなければなりません。
iPhoneの場合、アップルストアで用意をしてくれるのはiPhone本体だけです。
もちろんSIMなしのiPhoneじゃ、電話はできません。
じゃあ、SIMカードは??
これはキャリアからの貸与品なので、キャリアショップで再発行してもらう必要があります。(キャリアによるが、手数料は最低で税込2,160円)
つまり、スマホユーザーはiPhoneを紛失したらアップルストアにも行かなきゃいけないし、キャリアショップにも行かなきゃいけないわけです。
これはかなり面倒ですね。
その為、ケータイキャリアのケータイ補償サービスなどでは、SIMカードの再発行ができるキャリアショップで端末も一緒に受け取ることが可能でした。
それなら、キャリアの補償サービスに入っていない方がスマホを紛失してしまった場合は、メーカーと携帯キャリア双方とやり取りを全て自分でやって、新しいスマホを手に入れなくてはなりません。これは非常に時間が取られますし、初心者には分からないことも多そうです。
また、格安SIMユーザーが増えてきている現在、皆が皆、ケータイ補償サービスを展開している大手キャリアと契約を結んでいるわけではありません。
大手キャリアのように、街中に店舗を構えていないところが多い格安SIM各社と通信契約されている方もいらっしゃることでしょう。
時代が大手キャリアから格安SIMキャリアへ移り変わってきたら、これは大手キャリアで通信契約していた時と同じ感覚でいると、スマホを紛失した時、初心者にはどこに相談したらいいのか本当に困ります。下手するとたらい回しに遭う可能性が高いです。
iCrackedは、こういったスマホ初心者には分かりにくい、且つ面倒臭い雑務をサポートする立場となることを長期目線では考えているようです。
もちろん日本でもその存在を目指しているのかはまだ分かりませんが、海外のSIMフリースマホが大量に流入し始めて、ただでさえ国内キャリアの勢力(キャリアの存在意義)が弱まってきている日本です。ちょろいです。
決して、考えられないことではありません。
1つだけ気になるのは、上記引用の中にあるデータの転送という一文。
これはおそらく大手キャリアとの顧客データのやりとりだけをするってことだと思います。
まさか端末内のユーザーの個人情報までバックアップをとったり、それを転送したりっていうのは、個人情報に厳しい日本では難しいでしょう。
キャリアはケータイを売らなくなる?
いつも私は言ってますが、日本の携帯キャリア(docomo、au、Softbank)はもう本当に売るものがなくなってきてます。
横のアップルストアで同じiPhone7(しかもSIMフリー版)を販売してるのに、キャリアで予約したら、昨日やっとSoftbankに続いてauからiPhone7の入荷連絡がメールで来ました。
もう発売から1ヶ月経ってるよ…笑
そういえば、docomoからはまだ入荷連絡さえも来てません。
携帯キャリアはケータイが主力商材で、今ホントにそのケータイがまたまた全然売れない時代なのに、そのケータイをなかなか売らないとか、売れる環境を作らない(そもそも入荷が遅い)で一体何を売るつもりなんでしょうか?
言ってる間に、スマホは低価格のデュアルスタンバイSIMフリースマホが世界中から日本へ入ってきて、国内キャリアでは低価格で月額運用できる話し放題専用のガラケーか寝かせケータイしか売れなくなるだろうし、キャリアショップにスマホの修理を依頼しても即日修理はまだまだ出来ない。
挙句の果てにiPhoneならApple Storeに行ってくれとか言われて、Apple Storeに行っても予約を取ってないと当日に話さえも聞いてもらえないなんてホント時間の無駄でしかないです。
やっぱり、こうなってくると即日修理可能な第三者のスマホ修理業者が台頭してくるのも時代の流れですね、よく分かります。
日本のケータイ小売業は遅かれ早かれ衰退します。そして、ケータイじゃない形で大手キャリアは生き残る可能性があります。
売れるものは通信だけ
通信は通信でも、ケータイじゃない通信。これはIOT(モノのインターネット)と呼ばれるものです。
今までのキャリアで言えば、ケータイとかタブレットとかにしか入っていなかったSIMカード(通信)。
これが「実はこんなところにも使えちゃうんじゃないの?」というのがIOTです。
SoftbankもIOTへの意欲を見せていますし、今回KDDIもIOTに対する姿勢を明らかにしました。
「もう日本でケータイは飽和してしまったし、ケータイ通信でも格安SIMが出てきて勝てないや。じゃあ別のことで儲けようか。」
そんな大手キャリアの声が聞こえてくるような気がしますね。
話が広がりましたが、iCrackedはタダの世界のスマホ修理業者で終わろうとはしていないようです。
光通信と組んで、2019年3月には500店舗を目指すというスローガン、これはいずれは日本国内のケータイキャリアショップに変わる存在になろうとしているのかもしれませんね。
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